会長就任のご挨拶                                                Greeting

日本のサイトカイン研究の新境地を求めて

 

 この度、前会長の髙岡晃教先生からバトンを受け、2022年度総会まで本学会の会長の機会を頂くことになりました。同時に事務局も慶應義塾大学の私どもの教室へ引き継がせて頂きました。

 本学会の発足は、1954年に長野泰一および小島保彦両博士がウイルス抑制因子(後のインターフェロン)を世界に先駆けて発表したのち、1961年に「ウイルス抑制物質研究会」という形でスタートした研究会が前身となり、途中日本インターフェロン研究会を経て、1998年より現在の「日本インターフェロン・サイトカイン学会」と言う形で現在まで継続しており、今年(2021年)で、60周年という長い歴史のある学会です。本学会は日本におけるサイトカインに関する学会の原点とも言えるのではないかと思います。この歴史在る素晴らしい学会をこれからも存続させていくことはとても大切なことであると認識しております。インターフェロンや各種サイトカインの発見、遺伝子クローニングが日本の研究者によって成されており、本学会の構成員であられました。一方で、研究は時代と共に変遷していくもので、本学会の名前の変遷を見てもわかりますように、時代に即した形での変革がなされてきております。インターフェロン(IFN)は、サイトカインの代表的な存在で、JAK-STAT 経路研究のはじまりもIFNからでありました。またIFN遺伝子の発現誘導についての研究は、とりわけ、パターン認識受容体の同定に伴って発展してきた自然免疫研究の盛り上がりとともに大きく注目されてきました。他方、臨床の分野では、特にウイルス性肝炎の治療分野においてこれまでIFNの貢献が大きなものがありましたが、現在はむしろ抗サイトカイン抗体が様々な免疫疾患の治療に使われていますし、JAK阻害剤も追随しています。今後もインターフェロン・サイトカイン研究は、基礎から臨床へとつなぐ研究がさらに重要になってくると思います。

2020年はCOVID-19のパンデミックに翻弄された過酷な1年でした。しかし重症化に伴うサイトカインストームやmRNAワクチンなどの全く新しい技術の発展のなど本学会が深く関与すべき事象は数多くあります。サイトカイン研究は日本を代表する研究分野の1つであると認識されていましたが、残念ながら他の科学分野と同じくその世界的な貢献度は低迷しつつあり、今後の挽回のためにも本学会は重要な立場にあると考えます。本学会を通してサイトカイン研究の交流を深め、とくに若手研究者同士のコミュニケーションの場となり、日本から世界へ発信する研究の潮流をさらに大きなものへと発展させたい。そのための基盤的な貢献ができる学会を目指して活動して参りたいと思います。新規学会員への工夫は重要と考えられますが、如何にサイトカイン研究領域において魅力的な研究が展開できるかということが本領域へ研究者を参入させ、活発化させることにつながっていくものであると思います。さらにはサイトカインについての研究を広報することを含めた学会の社会貢献という活動も積極的に取り入れながら、長期的な視野で学会体制の拡張へと結びつけていくことを目指したいと考えております。

 是非ともご支援頂けますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

     2021年4月 

吉村 昭彦(慶應義塾大学)