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会長就任のご挨拶                                                Greeting

日本のサイトカイン研究の新境地を求めて

日本サイトカイン学会会員の皆様へ

2024年は能登半島地震、航空機事故と前途多難を予感させる幕開けとなりました。しかし我々は自分達のサイエンスを進展させることで逆境を乗り越え、新しい風景を描けるようにしたいものです。

 

2023年5月26日より日本インターフェロン・サイトカイン学会(JSICR)とマクロファージ分子細胞生物学研究会(MMCB)は「日本サイトカイン学会」(JCS)として再出発することとなりました。JSICRはウイルス抑制因子(=インターフェロン)の発見者である長野泰一および小島保彦両博士によって1961年に「ウイルス抑制物質研究会」という研究会を前身とする60年を超える長い歴史のある学会です。一方のMMCBも松島綱治先生を初代会長とし1995年に発足し30年の歴史があります。こちらは自然免疫研究を中心として、時代を先取りして英語での国際学術集会を毎年開催してきました。両学会ともに活発な活動を展開し、日本の感染免疫、生体防御、免疫疾患の研究に大きな貢献をしてきたと言えます。しかし時代の流れによりインターフェロンやサイトカイン、ケモカイン、マクロファージを中心とした研究のみでは感染や免疫の全体像を語れなくなりました。また同時に国内の研究状況の変化、特に学会員数の減少から学会のスリム化、効率化が求められています。そこで関連の深い両学会が合流することになったわけですが、これを機に、単なる数合わせではなく、両学会の特色を生かした新しい学問領域を開拓する気概を持って両学会の統合を宣言したいと思います。

なぜ「サイトカイン」学会なのか?私は本会の「サイトカイン」は物質としての名称ではなくその機能を象徴していると考えます。サイトカインはすなわち細胞間コミュニケーションツールです。「サイトカイン学」は生理活性物質を介した細胞間ネットワークを中心とする幅広い学問領域であると解釈しています。当然情報の発信、受け手となる細胞自身、その総和としての個体も研究対象になるでしょう。というと何でもありかもしれませんが、「細胞間ネットワーク」を核とする新学問領域と捉えています。

いうまでもなく、コミュニケーションやネットワークが重要なのは生体機能だけではありません。学問においても研究者間のコミュニケーションは専門性が細分化された現代においては特に重要です。本学会が「研究者間ネットワーク」のハブとなり日本から世界へ発信する潮流を取り戻したいと考えています。免疫学、特にサイトカイン領域は日本を代表する研究分野の1つであると認識されていましたが、残念ながら他の科学分野と同じくその世界的な貢献度は低迷しつつあり、今後の挽回のためにも本学会は重要な立場にあると考えます。そのためには何よりも若手を取り込むこと、境界領域(新領域)を開拓することが重要でしょう。それには会員各位が魅力的な研究を展開し、学術集会において発表することが一番に求められることです。第一回学術集会は2024年7月25-26日に開催されます。是非とも皆様の積極的なご協力、ご参加をよろしくお願い申し上げます。

 

     2024年1月 

JCS会長 吉村昭彦

 

この度、前会長の髙岡晃教先生からバトンを受け、2022年度総会まで本学会の会長の機会を頂くことになりました。同時に事務局も慶應義塾大学の私どもの教室へ引き継がせて頂きました。

 本学会の発足は、1954年に長野泰一および小島保彦両博士がウイルス抑制因子(後のインターフェロン)を世界に先駆けて発表したのち、1961年に「ウイルス抑制物質研究会」という形でスタートした研究会が前身となり、途中日本インターフェロン研究会を経て、1998年より現在の「日本インターフェロン・サイトカイン学会」と言う形で現在まで継続しており、今年(2021年)で、60周年という長い歴史のある学会です。本学会は日本におけるサイトカインに関する学会の原点とも言えるのではないかと思います。この歴史在る素晴らしい学会をこれからも存続させていくことはとても大切なことであると認識しております。インターフェロンや各種サイトカインの発見、遺伝子クローニングが日本の研究者によって成されており、本学会の構成員であられました。一方で、研究は時代と共に変遷していくもので、本学会の名前の変遷を見てもわかりますように、時代に即した形での変革がなされてきております。インターフェロン(IFN)は、サイトカインの代表的な存在で、JAK-STAT 経路研究のはじまりもIFNからでありました。またIFN遺伝子の発現誘導についての研究は、とりわけ、パターン認識受容体の同定に伴って発展してきた自然免疫研究の盛り上がりとともに大きく注目されてきました。他方、臨床の分野では、特にウイルス性肝炎の治療分野においてこれまでIFNの貢献が大きなものがありましたが、現在はむしろ抗サイトカイン抗体が様々な免疫疾患の治療に使われていますし、JAK阻害剤も追随しています。今後もインターフェロン・サイトカイン研究は、基礎から臨床へとつなぐ研究がさらに重要になってくると思います。

2020年はCOVID-19のパンデミックに翻弄された過酷な1年でした。しかし重症化に伴うサイトカインストームやmRNAワクチンなどの全く新しい技術の発展のなど本学会が深く関与すべき事象は数多くあります。サイトカイン研究は日本を代表する研究分野の1つであると認識されていましたが、残念ながら他の科学分野と同じくその世界的な貢献度は低迷しつつあり、今後の挽回のためにも本学会は重要な立場にあると考えます。本学会を通してサイトカイン研究の交流を深め、とくに若手研究者同士のコミュニケーションの場となり、日本から世界へ発信する研究の潮流をさらに大きなものへと発展させたい。そのための基盤的な貢献ができる学会を目指して活動して参りたいと思います。新規学会員への工夫は重要と考えられますが、如何にサイトカイン研究領域において魅力的な研究が展開できるかということが本領域へ研究者を参入させ、活発化させることにつながっていくものであると思います。さらにはサイトカインについての研究を広報することを含めた学会の社会貢献という活動も積極的に取り入れながら、長期的な視野で学会体制の拡張へと結びつけていくことを目指したいと考えております。

 是非ともご支援頂けますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

     2021年4月 

2023年5月26日よりJSICR/MMCB両学会は「日本サイトカイン学会」として再出発することとなりました。

自然免疫、獲得免疫を問わず、サイトカインや免疫細胞因子に関わる学術を広く扱い、研究者の相互交流の場として今後も活動を続けていく所存です。2023年度は吉村が、2024年度は東京医科歯科大学の樗木先生が会長を勤められます。また国際化の現状を鑑み、学術集会はMMCBで行われてきたように英語を原則公用語といたします。今後も日本サイトカイン学会(JCS)をよろしくお願いいたします。 

2023年7月

吉村 昭彦(慶應義塾大学)

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